車の相場って、本当に面白いものです。10年前には「安くて遊べる中古車」だったのに、久しぶりに相場を見たら、とても気軽には買えない価格になっている。旧車やネオクラを見ていると、そんな車がいくつもあります。
では、今から10年後の2036年はどうでしょう。「あのとき買っておけばよかった」と言われるのは、どの車なのか。今回は平成20年代以降の車に絞って、私の独断と偏見で5組を選んでみました。
最初にお断りしておくと、もちろん値上がりを保証する話ではありません。為替も税制も海外需要も、10年あれば大きく変わります。投資話としてではなく、これまで旧車の値段が上がってきた流れを思い出しながら、「次はこのあたりが面白いのでは」と一緒に楽しんでもらえればと思います。
今回の選考では限定車と希少車を除外

限定車や、発売されたときから誰もが価値を認めていた車を選ぶのは簡単です。でも、それでは少し面白くありません。今回は最初から希少だった車ではなく、普通に新車で買えて、中古車としても現実的に狙えたカタログモデルを中心にしました。
たとえば86ならGRMNや14R-60ではなく、普通のZN6です。シビックタイプRも特別仕様車ではなく通常のFL5。すでにプレミア相場になっているS660や、今の時点で十分に高いGRヤリスも今回は外しています。
大衆的な旧車にプレミア価格が付くまでの4段階

- 新車時に同ジャンルの中で一定以上の台数が売れる
街でよく見かけるほど普及し、部品や中古車の選択肢も豊富になります。 - 中古車の流通量が増えて価格が下がり、若い世代へ広がる
初めてのスポーツカーや改造ベースとして選ばれ、車そのものが若者文化の一部になります。 - 荒く使われた個体が減り、良質車が急速に少なくなる
事故、競技使用、過度な改造、整備不足、錆などによって、車両の総数より先に「買いたいと思える個体」が減少します。 - 何らかのきっかけで再び注目される
後継車の生産終了、映画やゲーム、海外需要、当時の若者の購買力上昇などが引き金となり、残っていた良質車へ需要が集中します。
ここが今回のランキングで一番大事なところです。新車時から少なかった車だけが高くなるわけではありません。むしろ、一度は街にあふれ、安くなって若い人に乗られ、気が付けばきれいな個体だけが残っていない。そんな車が、ある日を境に一気に見直されます。この流れを頭に置いて5組を並べました。
第5位 ホンダ シビックタイプR(FL5)

第5位はFL5型シビックタイプRです。2.0L VTEC TURBOに6速MT。純ガソリンエンジンで、前輪だけを使ってこれだけの性能を受け止める車は、今後ますます珍しくなるでしょう。
「いや、FL5はもう十分高いでしょう」と思いますよね。私もそこは同感です。底値から化けるタイプの車ではありません。それでも入れたのは、2036年に振り返ったとき、「電動化される前の2.0Lターボ+6速MTのタイプR」として強い意味を持つかもしれないからです。
もちろん、タイプRがこの先なくなると決まったわけではありません。ホンダが今後も名前を残す可能性は十分あります。ただ、次の世代がハイブリッドや電動化へ進めば、FL5の純粋なガソリン車らしさは、今よりずっと特別なものに見えるはずです。
では、なぜ5位なのか。今でも高価ですし、生産台数や次期型の姿もまだ読めません。大幅に値上がりするというより、10年後も高い評価を保っている車として入れました。
第4位 ホンダ N-ONE RS 6MT(JG3)

第4位はN-ONE RSの6速MTです。背の高い軽自動車にターボと6速MT。この組み合わせ、あらためて考えるとなかなか不思議で、ほかに代わりが見当たりません。
N-ONE RSは、サーキットの速さを競う車ではありません。買い物にも通勤にも使えて、それでもシフト操作を楽しめる。こういう「日常の中に残ったMT車」は、新車で売っている間より、なくなってから惜しまれることが多いんです。
もし次期型から6速MTが消えれば、そこで見方が一気に変わるかもしれません。ただし、MT廃止が決まったという話ではありません。あくまで、軽ターボと6速MTを新車で買える時代が終わったら、という条件付きの予想です。
ここで「軽のMTなら、アルトワークスのほうが先では?」と思う方もいるでしょう。もちろんHA36S型アルトワークスも有力です。ただ、良質な5MT車には新車時価格を上回る売値も見られ、すでにプレミア相場が始まっています。今回は、これから再評価が進む車を選ぶ企画なので、ひと足先に値上がり局面へ入ったアルトワークスは外しました。
軽自動車は毎日の足として使われるので、距離が伸びやすく、地域によっては下回りの錆も進みます。10年後、ノーマルで履歴がきちんと残った車は、想像以上に少なくなっているかもしれません。
第3位 日産 マーチNISMO S(K13改)

第3位はマーチNISMO Sです。1.5L自然吸気のHR15DEに5速MT、車重は約1,010kg。数字だけなら驚くほど速い車ではありません。でも、小さくて軽い車を自分で動かしている感じは、今の車ではかなり貴重です。
発売当時は、どうしても「マーチのスポーツグレード」という見られ方でした。もっと速い車はいくらでもありましたからね。ところが国内向けマーチがなくなり、自然吸気の軽量MTハッチまで消えてくると、この素朴さが急に魅力として見えてきます。
同じ日産なら、ノートNISMO Sのほうが速く、装備も充実しています。それでも私はマーチを選びました。小さくて軽く、昔のホットハッチに近い。そして今なら、まだ現実的な価格で探せます。「安いうちに乗られ、きれいな車から減っていく」という今回の筋書きには、マーチのほうが合っています。
こういう車は競技や峠、サーキット、改造ベースにも使われます。残存台数より先に、修復歴のないノーマル車が減っていくでしょう。将来、速さではなく軽さと操作感が見直されたとき、相場が動きそうな1台です。
第2位 スズキ スイフトスポーツ(ZC32S)

第2位はZC32S型スイフトスポーツです。1.6L自然吸気のM16Aは136PS、6速MT車で約1,050kg。今見ると、この軽さだけでも十分に魅力があります。
後継のZC33Sはターボで力強く、普段乗りもかなり楽です。速さや扱いやすさなら新しいほうが上でしょう。でもZC32Sには、自然吸気エンジンを回し、6速MTを忙しく使って走る楽しさがあります。この手応えは、カタログの数字だけでは伝わりません。
新車時によく売れ、中古価格が下がると若いドライバーの入門車になりました。だから距離の多い車も、サーキットを走った車も、足回りや吸排気を変えた車も多い。まだ台数があるように見えても、純正状態の良質車は少しずつ減っています。
10年後には「軽量、自然吸気、6速MT、しかも5人乗り」というだけで、十分に価値のある組み合わせになっているかもしれません。今ならまだ無理のない価格で探せる。その点も含めて第2位です。
第1位 トヨタ86/スバルBRZ(ZN6/ZC6)

そして第1位は、トヨタ86のZN6型とスバルBRZのZC6型です。この2台は共同開発された兄弟車で、基本骨格と2.0L自然吸気のFA20型水平対向エンジンを共有しています。細かな味付けやデザインには違いがありますが、今回は同じ時代のFRスポーツを支えた一組として選びました。
86は新車時にしっかり台数が出て、BRZも含めると中古車の選択肢はかなり豊富になりました。価格が下がると、初めてのFR、ドリフト、サーキット、カスタムのベースとして若い人に広がる。この流れは、かつてのAE86やシルビア、ツアラーVとよく似ています。
ただ、「たくさん売れたから将来も残る」とは限りません。86もBRZも、事故に遭う車、競技に使われる車、ワイドボディ化される車、整備不足で手放される車があります。掲載台数が多いうちは気付きにくいのですが、オリジナルに近い6速MT車から静かに減っていきます。
後継のGR86と2代目BRZも自然吸気FRを受け継ぎ、両車は一代限りの珍しい車ではなく、ひとつの文化になり始めました。いつかガソリンのFRスポーツを新車で買えなくなったとき、初代86と初代BRZは「若者がFRで遊べた時代の代表」として並んで語られる気がします。
台数が出た。安くなった。若者に乗られた。そして改造や事故で良質車が減り始めている。今回挙げた条件に、いちばん素直に当てはまるのがZN6型86とZC6型BRZです。私の予想では、この兄弟車が迷わず1位です。
5組の予想を一覧で比較

| 順位 | 車種 | 再評価されると考える理由 | 予想上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 1位 | トヨタ86/スバルBRZ(ZN6/ZC6) | 大流通、FR、6MT、若者文化、良質車の減少 | 現時点では流通量が多い |
| 2位 | スイフトスポーツ(ZC32S) | 軽量な1.6L自然吸気+6MT | 走行距離や改造歴の差が大きい |
| 3位 | マーチNISMO S(K13改) | 軽量コンパクト+自然吸気+5MT | 一般的な知名度はまだ限定的 |
| 4位 | N-ONE RS 6MT(JG3) | 日常性を持つ軽ターボ+6MT | 次期型とMT継続の有無に左右される |
| 5位 | シビックタイプR(FL5) | 純ガソリン2.0Lターボ+6MTの象徴性 | すでに高価で、生産状況も影響する |
2036年に高く評価されるのは車名より個体の中身

ここまで順位を付けてきましたが、同じ車種なら何でも高くなるわけではありません。相場が上がったときに真っ先に探されるのは、やはり履歴が分かり、きちんと手を入れられてきた個体です。
- 大きな修復歴がなく、ボディ骨格が健全
- 下回りやサイドシル、フェンダー内部の錆が少ない
- 整備記録が残り、油脂類や消耗品が適切に交換されている
- 純正部品が残っている、または純正状態へ戻せる
- 内装の欠品、穴開け、切断など元に戻せない加工が少ない
走行距離が少なければ安心、とも言い切れません。何年もほとんど動かしていない低走行車より、定期的に走りながら必要な整備を受けてきた車のほうが調子の良いこともあります。メーターの数字だけでなく、どんなふうに扱われてきたかを見たいところです。
値上がり予想だけを理由に購入しない

もうひとつ、値上がり予想だけで車を買うのはおすすめしません。税金、保険、車検、整備、保管場所。所有しているだけでも費用はかかります。相場が上がっても、修理代まで考えれば得をするとは限りません。
結局のところ、「値上がりしなくても、この車に乗りたいか」が一番大事です。好きで乗り、壊れたら直し、気が付けば価値も残っていた。それくらいの付き合い方が、車趣味としてちょうどいいのではないでしょうか。
まとめ|10年後に希少になるのは今の普通

今回選んだのは、ZN6型86/ZC6型BRZ、ZC32S型スイフトスポーツ、マーチNISMO S、N-ONE RS 6MT、FL5型シビックタイプRの5組です。
5組に共通するのは、単純な速さだけでは語れない楽しさがあり、同じ仕組みの車をこの先もう一度作るのが難しそうなことです。今は街で見かける車でも、10年後にきれいな状態で残っているとは限りません。
もちろん、これは私の独断と偏見です。2036年に答え合わせをしたら、まったく別の車が主役になっているかもしれません。でも、「次は何が来るだろう」と考えながら今の中古車を見るのも、車好きならではの楽しみ方だと思います。
のとり

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